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障がい者問題

障がい者問題

「障がい」とは?

障がいとは何でしょうか。障害者基本法は「障害者」について、次のように定義しています。

 

「身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」

 

前半は、いわゆる機能障害(インペアメント)、元々は障がいといえばもっぱらこの意味で使用されていました。これに対し、後半は、その障害(機能障害)に加え、「社会的障壁」を、継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を加える原因のひとつとして定義しています。

 

これは、障がいの「社会モデル」という考え方です。機能障害のある人が、それがない人なら難なく参加できる活動に参加できなかったり、施設を利用できなかったり、外出できなかったりするのは、その機能障害が原因なのではなく、必要な支援を提供しない社会がつくっている高い障壁によるものだ、というものです。道路や建物の段差をなくし、階段とは別にスロープを設置する。目の見えない人のために点字ブロックを、耳の聞こえない人のために手話通訳を提供するなどなど。障がいのある人が社会生活に参加するためには、各障がい固有の必要性に応じた適切な支援が必要です。

 

社会モデルでは、その支援を提供すべき責務を社会は負い、したがって、機能障害のある人にとってそうでない人と同じように活動に参加できない社会は、この責務を怠っていることになります。

障害者自立支援法違憲訴訟とはどんな裁判ですか

障害者自立支援法違憲訴訟とはどんな裁判ですか

障がいのある人に必要な支援は、憲法25条に基づき、社会福祉という形で制度化され、提供されるものですが、日本では、長らく身体障害、知的障害、精神障害について、それぞれ個別の法律があり、支援は統合的なものではありませんでした。その都度の政治状況や政策により、制度は変転し、当事者はその変遷に翻弄されてきました。

2005年に「障害者自立支援法」が制定され、2007年から施行されて、この3種の障害に対して同じ制度枠組みで支援を提供することになりましたが、拙速に当事者団体の反対を押し切って成立したこの法律は、当初から問題山積みのものでした。

特に問題となったのは、それまでは行政行為として行われていた支援が、施設と当事者との契約によって提供されるものとされ、支援の提供を受ける利用者は、一律その費用の1割を負担しなければならないという応益負担(受ける利益の額に応じた負担をすること)の制度です。障がいが重い人ほどたくさんの支援を必要としますから、これでは、障がいの重い人ほど多額の利用料を負担しなければならないことになります。しかし、障がいが重ければ重いほど、就労の可能性は小さくなり、したがって収入も少ないのですから、これは実際には極めて不公平で、障がいの重い人にとっては受け入れがたいものとなります。

実際、法律が施行されてみると、実情に合わないことは明らかで、政令や自治体の対応などにより、低所得の世帯に対しては、費用を負担させない、いわゆる応能負担(支払い能力に応じた負担を求める制度)に事実上切り替えざるを得ませんでした。

一方で、この制度は施設運営側にとっても過酷なもので、多くの施設が閉鎖を余儀なくされたため、障がいのある人達が行き場をなくし、思い詰めた母親が障害のある子を殺して自らも命を絶つ事件が複数生じました。

そこで、全国の当事者、支援者たちが話し合い、2008年10月31日、全国14裁判所に法律に基づき利用者への負担を決定した支給決定の取消等を求めて、一斉に裁判を提起しました。

この裁判は、政治家を動かし、民主党や公明党のマニフェストに障害者自立支援法の廃止や新たな総合福祉法の制定が掲げられ、2009年の総選挙でその民主党への政権交代が実現したことも追い風となって、1010年1月に原告団らと国・厚生労働省との間で2013年8月までに障害者自立支援法を廃止し、当事者の意見を踏まえた新たな法律を制定するとの基本合意が交わされ、これに基づいて訴訟は和解により終結しました。

基本合意での約束どおり、自立支援法は廃止され総合福祉法が制定されているのですか

基本合意での約束どおり、自立支援法は廃止され総合福祉法が制定されているのですか

基本合意とほぼ同時期に、政府は、内閣府に障がい者制度改革推進本部を設置し、そのもとに障がい者制度改革推進会議が形成されました。この会議は、その大半を障がい当事者が占める画期的なもので、課題ごとに部会がつくられ、集中的に濃密な議論が行われました。同総合福祉部会は、2011年8月30日、「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(略称「骨格提言」)を発表しました。基本合意を前提にすれば、この骨格提言で示された内容を満たす新たな法律が制定されるべきものとなります。

ところが、国は、基本合意に反し、障害者自立支援法を廃止せず、部分改正し、名称だけを変更するにとどめました。訴訟団は当然ながら、この裏切りを許さず、これまで国との間で闘ってきた他の訴訟団等に呼びかけ、抗議声明を発表しましたが、現在に至るまで、骨格提言を反映する法律の制定はないままです。しかし、最後のさいごまで諦めない粘り強い働きかけにより、改正法に、骨格提言の目指す理想の一部について入れ込むことまではでき、また3年以内の見直しを約束させました。

訴訟団、支援者団体は、「骨格提言の完全実現をめざす会」を設立し、骨格提言の理念を完全に反映した法律を実現するための活動を、現在も継続しています。

障がい者問題では現在どのような裁判が行われていますか

障がい者問題では現在どのような裁判が行われていますか

現在、全国各地で、自立支援法に基づく支援の支給決定について、あるべき内容を満たしていないとしてその取消と新たな支給決定を命じる判決を求める訴訟が提起されています。

福岡では、2012年に先天性心疾患のため、200メートル程度しか歩けず、したがって独りでは外出もままならない22歳の女性が、電動車いすの支給を求めたところ、自治体がこれを却下したという件について、その取消と電動車いすの支給を命じる判決を求める裁判を提起しました。

この裁判では2015年2月18日に原告の請求を認容する完全勝利の判決を勝ち取ることができました。この原告さんのように、外見からは障がいの有無が分からない内因性の障がいを「内部障害」と言います。内部障害の方に、補装具費の支給を命じる「義務付け」判決は国内初の快挙です。事務所ブログに詳細を紹介していますので、そちらをご参照下さい。

また、2007年に佐賀市で当時25歳の知的障害を持った安永健太さんが、自転車で帰宅中にパトカーの警察官から咎められ、無理矢理に歩道上でうつ伏せにされ、後ろ両手錠にされて5名の警察官から押さえ込まれて、急死するに至った事件について、佐賀県に国家賠償を求める裁判についても、控訴審から加わっています。こちらも事務所ブログに紹介していますので、ご参照下さい。

こうした裁判を通じて、私たちは、障がい者福祉が憲法に照らしてどうあるべきなのかを明らかにしていきたいと考えています。