取り扱い事件

医療過誤(患者側)

医療過誤事件

九州合同法律事務所は、開設以来、医療の各分野における患者の権利の確立と、医療事故被害の回復を事務所の中心的な課題と位置付けてきました。
現在所属する弁護士5名全員が、九州・山口医療問題研究会の会員であり、常に複数の医療過誤事件を担当しています。当事務所の事件の最も多数を占めるのが医療過誤事件です。

医療過誤事件とはどのような事件ですか?

医療過誤事件とはどのような事件ですか?

医療過誤事件は、医療機関の診療にミスがあり、その結果として患者に被害が生じたとして損害賠償を求める事件です。
具体的にはさまざまなタイプの医療過誤事件があります。イメージを掴んでいただくために、うちの事務所で取り扱った事件をいくつか挙げています。ご参照下さい。

 

嘔吐を主訴として受診した児童の腸重積を見逃し死亡

ポイツ・イエーガー症候群が疑われていた12歳の児童が嘔吐を訴えて、繰り返し医療機関を受診したのに、医師は嘔吐下痢症による脱水と診断、点滴のみで対処しました。死後の病理解剖でポイツ・イェーガーによる小腸ポリープを先進部とする腸重積であったことが判明。血液検査を行わなかった医師の過失が認められ、患者側勝訴となりました(福岡高裁平成26年9月4日判決)。詳細は、事務所ブログ「佐賀の腸重積事件、上告棄却及び上告不受理により確定」をご参照ください。

 

子宮頸がんワクチン予防接種により肩関節の障害

子宮頸がんワクチンサーバリックスの予防接種を受けたところ、薬液が肩峰下滑液包に侵入し、滑液包炎から肩関節の運動障害を生じました。接種位置が高すぎた過失が認められ、患者側勝訴となりました(福岡地裁平成26年12月9日判決)。詳細は、事務所ブログ「子宮頸がんワクチンサーバリックス誤接種事件ほぼ完全勝訴」をご参照ください。

 

胸部大動脈に対する人工血管置換術で下半身麻痺

胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術を受けたところ、下半身麻痺となりました。術前の説明なく患者の同意を得ずにプルスルー法という術式を採用したことが医師の裁量を逸脱したものであると認められ、患者側が勝訴しました(鹿児島地裁平成25年6月18日判決)。詳細は、事務所ブログ「鹿児島大学プルスルー法事件の顛末」をご参照ください。

判例時報2207号に判決文が掲載されています。

 

熱中症に対するクーリングが不適切で死亡

野球の練習中に倒れて救急車で搬送された熱中症の患者に、氷嚢で腋の下や鼠径部を冷やすクーリングを実施しましたが、体温を下げるのに時間を要し、多臓器不全で亡くなりました。判決で、クーリング開始の遅れと、より適切なクーリング手段(気化熱を利用する方法)を選択しなかった過失が認められ、患者側が勝訴しました(福岡地裁平成15年10月6日判決)。事務所ブログで紹介している「小説医療裁判〜ある野球少年の熱中症事件」の題材になった事件です。

判例時報1853号及び判例タイムズ1182号に、判決文が掲載されています。

 

リンデロンの長期連用で難聴

慢性中耳炎で鼓膜穿孔のある患者が、医療機関の処方に従ってリンデロン点耳薬(抗生物質とステロイドの合剤)を36日間連用したところ、感音性難聴の後遺症が残りました。リンデロンを36日間連用させたことが注意義務違反と認められるか否か、リンデロンと感音性難聴との因果関係が認められるのかどうかが争われましたが、裁判所はいずれも患者側の主張を認め、請求を認容しました(福岡地裁平成15年4月22日判決)。

判例時報1837号及び判例タイムズ1167号に判決文が掲載されています。

 

DICを起こした急性白血病患者を専門家のいる医療機関に搬送せず死亡

急性白血病でDIC(播種性血管内凝固症候群)が疑われる患者に、抗DIC治療も血小板輸血も行わないまま漫然と入院させ、入院3日目に患者は脳内出血で死亡しました。裁判所は、早急に血管内科専門医のいる総合病院に転医させなかった点で注意義務違反を認めましたが、その注意義務違反がなければ死亡しなかったとまではいえないとして、適切な治療を受ける機会を奪われた慰謝料のみを認容しました(福岡地裁平成18年2月3日判決・福岡高裁平成18年9月12日判決)。

判例タイムズ1256号に判決文が掲載されています。

 

鬱血性心不全の患者にテノーミン、ワソランを併用投与して心停止

甲状腺機能亢進症で頻脈性心房細動から鬱血性心不全をきたしている患者に対し、心拍数コントロール目的でテノーミン等を投与したところ、急激に血圧及び酸素飽和度が低下、蘇生措置にも反応せず死亡しました。裁判所は、テノーミンは鬱血性心不全には禁忌とする添付文書の注意事項に反する投与であり、また特段の合理的理由もないとして和解を勧告、過失を前提とする和解が成立しました。詳細は、事務所ブログ「鬱血性心不全へのテノーミン、ワソラン併用投与〜和解解決事例から」をご参照ください。

 

OTC欠損症の女児が、肝生検後、高アンモニア血症で死亡

OTC欠損症(オルニチン・トランスカルバミラーゼという尿素サイクルに関わる酵素の一つが先天的に欠損していることによりアンモニア処理能力が低下する病気)の女児に、生体肝移植の適応を判断するために肝生検をしたところ、生検後、高アンモニア血症をきたして死亡しました。肝生検後、不穏や嘔吐がみられた際に速やかに血中アンモニアを測定し、治療を開始しなかった過失があるとして、訴訟上の和解が成立しました。

 

喉頭がん手術後に血圧が低下し植物状態に

喉頭がんの手術後の血圧低下に、昇圧剤投与で対応したものの低血圧が遷延し植物状態になり、意識を回復しないまま約2年後に死亡しました。術後管理の適否(過失)、植物状態となった原因(因果関係)とも争われましたが、輸液管理の過失があったとして、訴訟上の和解が成立しました。

 

糖尿病患者の低血糖昏睡を見逃し遷延性意識障害から死亡

糖尿病で血糖降下剤を服用している患者が、朝、ベッドから転落し意識障害のある状態で発見され、約15時間後の血液検査で34mg/dlという低血糖がみられました。意識障害発現後速やかに血糖測定をしなかった過失があるとして、訴訟上の和解が成立しました。詳細は事務所ブログ「糖尿病患者の意識障害〜和解解決事例から」をご参照ください。

 

寝たきり高齢者がベッドから転落して死亡

自力では寝返りを打てない高齢女性が、介護員のおむつ交換中、ベッドから転落し、大腿骨及び骨盤を骨折して失血死しました。医療機関は介護員の過失を争いましたが、裁判所の和解勧告により、過失を前提とする訴訟上の和解が成立しました。

 

胸部X線の異常陰影を見落とし肺がん発見が遅れる

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者の胸部レントゲン写真に肺がんを疑わせる陰影があるのを見逃し、その約1年後に肺がん及び脳転移が発見されました。胸部レントゲン写真で肺がんを疑い、胸部CTによる精査を行わなかった過失があるとして、訴訟上の和解が成立しました。

 

心窩部痛を訴える患者の大動脈解離を見逃し死亡

心窩部痛を訴えて受診した患者に対し担当医は大動脈解離を疑ってCT(単純・造影)を撮影したものの、異常を見出せず、痛みの原因は胃もたれであるとして帰宅させましたが、約4週間後、患者は大動脈解離よる出血で死亡しました。担当医が患者を帰宅させた後、放射線読影医から担当医宛に、造影CTで大動脈解離の所見があることが報告されていたことが判明し、医療機関が責任を認めて訴訟提起前の示談が成立しました。

 

美容形成外科での脂肪吸引術中に高熱を発して意識消失し死亡

大腿部脂肪吸引+バスト自家脂肪注入術中にけいれん、高熱を発して意識消失、翌日死亡しました。施術のために、極量を遥かに超えるキシロカインが使用されていたことが判明し、訴訟提起前の示談が成立しました。

 

ブラッドパッチ後の硬膜外血腫で四肢麻痺

頭痛、前胸部痛、吐き気を主訴として入院した患者に頸椎7番〜胸椎1番のブラッドパッチを施行したところ、施術後まもなく四肢麻痺の症状が発現しました。MRIで頸椎硬膜外血腫がみられたため血腫除去術を行い、それでも頸髄の浮腫が増強するため頸椎椎弓切除術を行いましたが、四肢麻痺は改善せず、寝たきりの状態になってしまいました。医療機関は過失を争ったものの、最終的には後遺障害等級1級相当を前提とした逸失利益、介護費用、慰謝料を含む訴訟提起前の示談が成立しました。

 

心室中隔欠損閉鎖術後に心膜切開後症候群による心タンポナーデから脳性麻痺に

心室中隔欠損症のこどもが、パッチによる心室中隔欠損閉鎖術後、心膜切開後症候群によって心タンポナーデとなり低酸素脳症後遺症による脳性麻痺となりました。術後の頻脈や、嘔吐によって心膜切開後症候群を疑って診療にあたらなかった医療機関が過失を認め、訴訟提起前の示談が成立しました。

医療過誤事件に遭ったと思った場合に、弁護士に相談する前に、何かしておくべきことがありますか?

医療過誤事件に遭ったと思った場合に、弁護士に相談する前に、何かしておくべきことがありますか?

相談前にしておくべきことは特にありませんが、診療経過を時系列的にまとめたメモを作成しておくと、限られた相談時間を有効に使うことができます。

診療経過の中で、あるいは死亡した場合に、医療機関から発行してもらう診断書は、必ずコピーをとっておくようお勧めします。相談の際に、弁護士が事案を把握するためにとても重要な資料になります。

また、先にカルテ開示を請求して、カルテのコピーを持参していただければ、より踏み込んだ相談が可能です。カルテ開示を請求するかどうか迷っているとか、開示請求の方法が分からないという方もおられるかと思いますので、開示前であっても遠慮なくご相談ください。

相談する前に、ご自分で医療機関から経過の説明を受けておいた方がいいかという質問もよく受けます。もちろん、医療機関から説明を受けた上で弁護士に相談するかどうかを決めるというのも一つの考え方です。他方、医療機関からの説明をよく理解するために、あるいは医療機関に聞きたいことをまとめるために弁護士に相談するということも可能です。

あまり迷わずに、とりあえず事務所に電話をかけてみてください。

医療過誤事件を依頼するにはどれくらいの弁護士費用がかかりますか?

医療過誤事件を依頼するにはどれくらいの弁護士費用がかかりますか?

九州合同法律事務所では、医療過誤事件は、まず調査として受任することを原則としています。

最終的には民事損害賠償請求の問題になりますが、請求が認められるためには、医療機関に過失があり、発生した損害との間に法的な因果関係が認められることが必要です。しかし、このどちらも、カルテなどの資料を精査し、また、相手方からの説明を聞き、医学文献や協力してくれる医療関係者の助言などにもとづいて検討しなければ、判断することができません。こうした調査の結果、残念ながら責任追及は難しいという報告をさせていただくこともあります。そのため、最初から損害賠償請求事件として受任するのではなく、調査という形でお受けしています。

つまり、この調査とは、民事損害賠償請求が認められる見込みについて調査し、報告するというものです。

調査費用は、25万円(消費税別)です。

この費用は、調査結果のいかんにかかわらず(つまり責任追及の見込みなしとして調査のみで終了する場合でも)、お返しすることはできませんので、そのことをご理解の上、依頼していただくようお願いいたします。

調査の結果、責任追及の見込みがある事案については、その旨を報告し、依頼者が希望されれば、引き続き損害賠償請求を受任いたします。その場合の弁護士費用(着手金)は原則として、下記の基準によって算定します。

 請求額が300万円以下の部分について       請求額の8%(消費税別)

 請求額が300万円〜3000万円の部分について  請求額の5%(消費税別)

 請求額が3000万円以上の部分について      請求額の3%(消費税別)

例えば、2000万円の損害賠償請求を受任する場合、計算は下記のようになります(消費税別)。

 (300万円╳8%)+{(2000万円-300万円)╳5%}=109万円

調査費用として既に25万円いただいている場合には、それをこの着手金の内金として扱います。つまり、調査から損害賠償に移行する段階でいただく弁護士費用は
 109万円-25万円=84万円
となります。

また、相手方から賠償金を得る形で解決した場合には、その賠償金の15%(消費税別)を弁護士報酬としてお願いしています。

以上は、あくまでも弁護士費用であり、それ以外に、実費が必要になってきます。

弁護士費用以外に必要になる実費とはどのようなものでしょうか?また、どれくらいを予定しておけばいいでしょうか?

弁護士費用以外に必要になる実費とはどのようなものでしょうか?また、どれくらいを予定しておけばいいでしょうか?

九州合同法律事務所では、調査受任の段階で、実費として5万円をお預かりすることにしています。

医療事故調査は、具体的には、医療記録精査による事案の把握、関連する医学文献の調査、医療関係者からの聴き取りといった内容になります。そのために、交通費、記録謄写費、文献購入費、医師との面談料などが、お預かりした実費の使途になります。

調査終了段階で、この5万円が残っていれば、お返しいたします。また、調査の途中で不足しそうであれば(多くは遠隔地の専門医に協力を求める必要がある場合です)、ご相談の上、追加していただく場合もあります。

損害賠償に移行する際には、改めて実費について相談させていただくことになります。

訴訟を提起する場合、まず訴状に添付する収入印紙が必要になります。この印紙額は、請求金額によって決まります。例えば、2000万円を請求する裁判を起こす際に訴状に添付しなければならない印紙は8万円です。1億円請求する場合には32万円になります。

そのほか、調査段階と同様に、交通費、記録謄写費用、文献購入費などが必要に応じてかかることになりますが、医療過誤訴訟において最も大きいのが鑑定費用です。

鑑定とは、訴訟の決着をつけるために中立的な専門家の意見を聴くという手続で、これを依頼した場合、50〜100万円程度の費用がかかります。ただし、鑑定が必要かどうかは事案によってさまざまであり、実際に鑑定までいく訴訟はそれほど多くはありません。

医療過誤事件を依頼した場合、解決までにどれくらいの時間がかかるのでしょうか?

医療過誤事件を依頼した場合、解決までにどれくらいの時間がかかるのでしょうか?

解決までにかかる時間は、事案によってさまざまであり、一口にはいえません。

まず調査を依頼されてから、調査の結論が出るまでに一定の時間がかかるとお考えください。わたしたちは原則として半年以内には調査結果をご報告すべく努力していますが、相手方の対応や、協力を求める専門家の都合で、見通しをつけるまでに半年以上の時間がかかることも珍しくありません。

責任追及の見込みありとの結論で損害賠償請求に移行した場合、まずは相手方に請求書を送って訴訟外での交渉を行うのが一般的ですが、相手方ではこれを医師損害賠償保険の審査にかけることになります。この保険の審査が、やはり半年程度はかかるのが普通です。

このような示談交渉で解決に至らなかった事案が訴訟になるわけですが、訴訟になってからの時間については、いちおう裁判所の統計があります。

最高裁判所の統計では、医療過誤訴訟の一審(ふつうは地方裁判所)での平均審理期間は、2010年で24.4月、2011年で25.1月となっています。つまり約2年強ということになります。福岡地裁の場合はこれよりやや短く、2010年で18.9月、2011年で19.0月という数字が発表されています。

ただし、これはこの期間で事件が完全に解決したことを意味するものではありません。この中には、和解で終了した事件も、判決で終了した事件も含まれています。和解で終了したのであればそれで事件は解決ですが、一審が判決で終了した場合、その判決に不服な側は高等裁判所に控訴することができます。その控訴審判決に不服な場合は、さらに最高裁への上告も可能です。そのような事件も含めて、いったいどれくらいが平均なのかという統計的な数字はありませんし、あってもあまり意味はなさそうですね。

納得できる解決を求めるには、それなりの時間がかかります。重要なことはどれくらい時間がかかるかを予測することよりも、その事件が、解決に向けてどのような段階にあるかを把握することであり、依頼者と弁護士とがその認識を共有することだと思います。

医療過誤事件はなかなか患者が勝てないと聞いていますが、実際にはどうなのでしょうか?

医療過誤事件はなかなか患者が勝てないと聞いていますが、実際にはどうなのでしょうか?

一審で判決が出た事件のうち、患者側の請求が認容された事件がどれくらいの割合であるかについては、最高裁の統計があります。

一般的な訴訟では、原告(請求を起こした側)が8割以上の確率で勝訴しています。これは被告側が争わなかった事件も含めての数字ですが、被告側が争って人証調べ(本人尋問や証人尋問)が実施された事件でも、原告勝訴率は6割以上です。それに比較すれば、医療過誤事件の原告勝訴率はこの10年間で最も高かった2003年でも44.3%ですし、2008年以降は20%台で推移しています。このような数字をみると、確かに、患者側が勝訴判決を得ることは容易ではないといえます。

ただし、医療過誤事件で、判決によって解決する事件はそれほど多くありません。

最高裁の統計で、2002年〜2011年までの一審終局区分(一審がどのような形で終わったか)をみると、その約5割は和解です。約4割が判決で、残りがそのほか。判決が出た事件のどれくらいが控訴され、控訴審でどうなったかの統計はありません。

福岡地裁の統計では、さらに和解が多くなっています。こちらは2002年〜2012年までの合計で、全国統計とは時期がややずれるのですが、和解71%、判決21%、そのほか8%。

もちろん、訴訟にまでいかずに示談交渉で解決する事件もたくさんありますので、訴訟での原告勝訴率だけをみて、「勝つのは難しい」と諦める必要はありません。

医療事故はどれくらいの頻度で発生しているのでしょうか?

医療事故はどれくらいの頻度で発生しているのでしょうか?

医療の場で、患者にとって有害なアクシデントが起こることを、一般に、「医療事故」と呼んでいます。その「医療事故」が、医療機関の過失によって起こったと評価される場合が、「医療過誤」であり、患者側が「この事故は医療過誤である」と主張して損害賠償を求めるのが「医療過誤事件」といえます。

全国的にどれくらいの医療事故が発生しているのか、正確なデータはありません。

医療法施行規則は、特定機能病院等一定の医療機関に、医療事故報告を義務付けており、その報告は、日本医療機能評価機構の、医療事故情報収集等事業に集約されます。2011年中に届けられた事故の件数は2483件でした。報告義務を負う約270の医療機関は、病床数にして合計約14万と、日本の病床数の約8%を占めています。この割合で単純に日本全国の医療事故件数を割り戻してみると、約3万件といったところでしょうか。

この数字は年々増加しています。しかし、そのことから、医療事故の発生件数が年々増加しているとはいえないと思われます。むしろ、2005年から開始されたこの医療事故情報収集等事業が、医療現場にだんだん定着してくるにしたがって報告漏れの事故が少なくなってきたということでしょうか。逆にいえば、まだまだ報告されない医療事故が埋もれているということもいえそうです。

2011年中に報告された事故事例2483件中、死亡事故は140件でした。さきほどと同じ計算をすれば、日本全国では1750件程度の医療事故死が発生しているということになります。

なお、2003年から2005年にかけて実施された厚生労働科学研究「医療事故の全国的発生頻度に関する研究」は、有害事象は、調査対象となった入院の約6.8%に生じており、そのうち予防可能であったものが23.3%としています。日本では年間約94万人が病院で亡くなっていることから、そのうちの約1万5千人は医療過誤死ではないか、という人もいます。

ちなみに交通事故死は、過去最多であった1970年が1万6765人でしたが、さまざまな交通安全の取り組みによって、2012年には4411人まで減少しています。

医療事故も、きちんと調査し、適切な再発防止策を講ずることによって減らせるはずだと私たちは考えています。